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静岡地方裁判所浜松支部 平成9年(モ)212号 決定 1998年4月17日

静岡県磐田郡豊田町宮之一色三四二の一

申立人(本案原告)

齋藤俊雄

右訴訟代理人弁護士

森下文雄

石田亨

東京都千代田区霞が関一-一-一

相手方(本案被告)

右代表者法務大臣

下稲葉耕吉

右指定代理人

小暮輝信

井上良太

醍醐保江

小木一一

石原吉雄

戸苅敏

相良修

主文

本件申立てを却下する。

理由

第一本件申立て及び双方の意見の要旨

一  本件申立て

1  文書の表示及び趣旨

被相続人齋藤三郎の相続税に関し所得税法に基づき調査した照会回答書類及びそれに基づき申告洩れと判断した項目、数字等を記した書類。

2  文書の所持者

磐田税務署長

3  証明すべき事実

右の修正申告にかかる不透明な手続きと過大な修正申告の事実。

4  文書の提出義務の原因

民訴法二二〇条三号後段、同条一号(同法附則二条による改正前の民訴法三一二条三号後段、同条一号)。

二  相手方の意見

1  本件申立ては、文書の表示及び趣旨を明らかにしたものとはいえない。

2  本件文書は、調査担当係官が専ら税務調査の便宜等のための自己使用を目的として収集作成した内部文書であり、法令上作成が義務付けられているわけでもないから、三号後段の法律関係文書に該当しない。

3  本件文書は、質問検査権等の行使の相手方ないしは申立人以外の共同相続人の秘密にかかる文書であるところ、監督官庁である磐田税務署長はその守秘義務を解除していないから、本件申立ては不適法である。

4  相手方は本件文書を自ら所持していないから、本件申立ては一号の要件を充足しない。

5  申立人が一号の引用文書の根拠とする相手方の主張は、本件文書の存在に言及するものではなく、その主張自体が枝葉末節的なものでもあるから、本件文書は一号の引用文書に該当しない。

6  本件文書は証拠調べの必要性が認められない。

三  申立人の意見

1  本件文書は、相手方においてそれが如何なるものであるか熟知しているのに対し、申立人には個々の文書表示が明らかでないから、文書の特定としては充分というべきである。

2  本件文書は、税務職員が租税法律関係の形成を目指して公務として蒐集、作成したものであるから、自己使用目的の内部文書ではない。

3  磐田税務署長に本件文書の開示を拒む権限はなく、そもそも共同相続人間において相続税に関する秘密は存在しない。

4  磐田税務署長は相手方の機関であって第三者ではないから、本件申立ては一号の要件を充足する。

5  米津係官が被相続人の取引証券会社などに対する反面調査を行い調査結果を取りまとめたところ修正申告額となった旨の被告の主張は、枝葉末節的なものではない。

6  本件文書は本案の争点に直結する重大な資料である。

第二当裁判所の判断

一  民訴法二二〇条三号後段にいう「挙証者と文書の所持者との官の法律関係について作成された文書」とは、挙証者と文書の所持者との法律関係それ自体を記載した文書だけではなく、その法律関係に関連のある事項を記載した文書をも含むが、文書の所持者が専ら自己使用のために収集作成した内部的文書はこれに当たらないと解すべきところ、申立人が提出を求める本件文書は、税務調査の担当係官がその職務を遂行する過程で専ら自己使用のために収集作成した内部的文書にほかならないから、本件文書は同号後段所定の法律関係文書に該当するものではない。

二  また、申立人が同条一号該当性の論拠とする相手方の本案における主張は、担当係官が被相続人の取引証券会社などに反面調査を行い、その調査結果を取りまとめた事実をいうにすぎず、何ら積極的に本件文書の存在に言及するものではないから、本件文書は同号所定の「当事者が訴訟において引用した文書」にも該当しない。

三  よって、その余の点について判断するまでもなく、本件申立ては理由がないからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 田中優 裁判官 内山梨枝子 裁判官 有賀直樹)

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